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  日本の核抑止力について

  2021.8.26 

    バイデン大統領は、8月16日、アフガン駐留米軍を撤退させることについて、「アフガン国軍が戦う気のない戦争で米兵が戦死してはならない」と説明した。この言葉には重要な二つの意味があって、我々日本人はこの言葉を聞き逃すわけにはいかないだろう。一つは米国の都合でいつでも駐留米軍を撤退させることができるということ。もう一つは、戦争は同盟国が主体で戦うもので米軍は支援する立場であり、同盟国が戦う気のない戦争には、米国は手を引くということである。さすがに日本など同盟国には動揺が広がった。それを払拭するため、バイデン大統領は、アフガン情勢と日米同盟は「比較の対象にならない」と述べたが、後の祭りであろう。

    米軍は情勢が不利とみれば躊躇せず、紛争地からの撤退を選択するようになったのである。それはおそらく2018年頃からであろう。8月11日の産経新聞によれば、2018年の米国家防衛戦略策定にあたったエルブリッジ・コルビー元国防次官補代理は、日米の次期国家安全保障戦略・国防戦略に関して、「米国は中国が支配するアジアから手を引けるが、日本はアジアから後退することはできない」と述べたそうである。だから、日本は軍事予算をもっと増やせということらしいが、この言葉からも、米軍の基本的な戦略が「米国は中国が支配するアジアから情勢によってはいつでも手を引ける」という柔軟なものに変わったことが分かろう。それは中国が米国の手に余るほど巨大になったからである。米中「新冷戦」が本格化すれば、米国は太平洋を挟んで中国と対峙する構えとなり、同盟国日本が中国に侵略されようとも、中国との全面戦争は避けるであろう。常識的にみても、米国がアジアの一国のために米国民を中国の核攻撃にさらすことは、米国民が許すはずはない。日本に対する米国の核の傘は、あくまで約束事であり履行されることはなかろう。結果として、中国の核は相対的に戦略上の重要性を増すことになる。

    最近、中国のネットサイトで、日本が台湾有事に軍事介入すれば中国は直ちに日本に核攻撃を加えるという,「核攻撃で日本を平定」という動画が広まった。一応、民間人がネット上に載せたという体裁をとってはいるが、この動画は、核を使って日本を恫喝するという中国共産党や軍の戦略を明示しているものとみられている。台湾有事のような何らかのキッカケで、中国が、民兵を尖閣諸島に上陸させ領有を宣言する、そして同時に沖縄を工作により日本から分離独立させ、沖縄をも領有するシナリオは以前から言われているが、今、十分に現実味を帯びているのである。このシナリオが実行され、沖縄が中国領となれば、後は熟柿が落ちるように、日本は中国に支配されることになろう。自衛隊が中国正規軍と戦う機会もないかもしれない。もしあるとすれば、日本に住んでいて国防動員法により工作員と化した中国人との戦いであろう。中国本土からの波状的なサイバー攻撃により、情報通信は遮断され、インフラは破壊され、電気、水道、食料などのライフラインも至るところでストップし、市民生活がマヒした状態で、工作員がドローンなどを使って破壊放火活動をして、流言飛語が飛び交えば、自衛隊はなすすべもなかろう。

    核の傘を失えば、日本は中国にいいように支配されるようになることは上でみたとおりである。北朝鮮にも、言いなりにならざるを得なくなるであろう。では、日本人の生命財産、日本の経済、情報サイバーセキュリティを守るためには、何が本質的なことであろうか。突き詰めれば、それは、日本が独自の核抑止力を持つことにほかならないであろう。筆者はそう考える。日本が独自の核抑止力を持つことによって、自衛隊の戦力は生きる。中国と正面切って戦える、その気概が日本人に生まれよう。中国は実は戦争に弱い。日本と戦争せず、熟柿が落ちるように日本を手に入れたいはずであり、その野望を打ち砕く上で決定的なものとなろう。なによりも、日本は米国の属国であるという「属国根性」を払拭できよう。それによってセキュリティを中心に据えた理に適った、中国、北朝鮮、韓国に対する外交戦略、内政の見直しが行われよう。憲法の改正が行われ、戦後からの本当の脱却がここで図られよう。

    では、日本が独自の核抑止力を持つためにはどのようにしたらよいのか。米国から核シェアリングをするのが最上と考える。日本は、中国や北朝鮮の核の脅威から国民の生命財産を守るため、米国にドイツに行っているような核シェアリングを要求すべきである。日本の置かれている状況を作り出したのは、GHQ憲法を押し付け、誤った中国政策を推し進めた米国にも一因があり、粘り強く交渉すべきである。もし、聞き入られなければ、独自で核開発を行うと言えばよい。短期間で核兵器を開発する能力があることは米国も知っているから、ハッタリではない。ただその場合、日本は国際社会から非難を浴びることになるので、できるなら避けたい。兵器級まで高濃度に濃縮可能な核物質を入手する問題もあろう。

また、同時並行的に、垂直発射管を持つ弾道ミサイル潜水艦を3隻以上、建造すべきである。日本近海で行動するので原子力潜水艦でなくても、通常型潜水艦で抑止の目的は達成されよう。将来、固体リチウム電池が実用化されれば、連続潜航時間は1月以上に伸び、原潜に近いパフォーマンスが得られる可能性もある。

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